糖尿病内分泌 から桃内科院長 熊谷 尚子

My Clinic
Startup Story

みんなで一緒に、
成長していく

自分でクリニックを
開業したら、
もっと自由に
やれるんじゃないか

私が開業しようと思ったのは、ある日のふとした思いつきからです(笑)。実家が開業医だったのですが、それまでは一度も考えたことがなくて、むしろめんどくさそう、くらいにしか思っていませんでした。ところが、思いついたら、そのことが気になり出してしまったのです。というのも、大きな病院だと、新しいことを始めるのにも委員会の許可が必要だったり、いろいろな手続きを踏まなければいけなかったりして、何かと制約が多かったんです。

例えば、患者さんの血糖値をスマートフォンで管理し、そのデータをクリニックのシステムと同期させるアイディアが浮かんだとします。血糖測定などのデータを収めるクラウドのプラットフォームに患者さんがアクセスしてスマホのデータと同期させることで、こちらからは患者さんが手帳を持ってくる前から状況がみられるようになるし、食事を写真とってアップしてもらえばカロリーと、血糖値のトレンドを確認でき、医師もそのデータを基に診察できるという便利なシステムが作れるはずです。

でも、実際にそのシステムを導入しようとすると、病院の内部ルールやプラットフォームの問題で、なかなか実行に移せないことが多かったのです。そんな状況で、自分の「好き」や「こだわり」を自由に表現する方法として開業という選択肢が急に現実味を帯びてきました。すると、次第に「開業したらどうなるだろう」と、そのことばかり考えるようになってしまいました。

クリニックの
設計に込めたこだわり

開業にあたり、特にこだわったのは、なんといっても、クリニックの設計です。建築士さんともたくさん話し合って、細かくこだわりました。たとえば、診療室の手前に検査スペースを設けています。

糖尿病や甲状腺疾患など、多様な検査に対応できるように設計しましたが、重要なのはその日のうちに結果が出ること。患者さんはすぐに診察結果を知りたいものですし、私たちも迅速な対応ができるというのは大きな強みです。

検査の種類の多さに伴ってスペースの種類も多いため、排水の位置を考慮したりして、スタッフが効率よく動けるようにしました。全体の見通しが良くなるように工夫して、処置室やベッドも一気に見渡せる設計にしているんです。私の診察室と糖尿病療養指導室を繋ぐ専用の扉も設けました。

これは、糖尿病療養指導士の方が裏から情報を共有できるように設けたもので、スムーズな連携を可能にしています。一人勤務医時代からずっと仲が良くて、開業の時も「ついてきてくれますか」なんてプロポーズのようなことをして、今は遠くから通ってくださっている糖尿病療養指導士の方がいるんですが、その方専用の扉ですね。

そして、当院で1番広いのは待合室です。ここで患者さん向け、スタッフ向けの勉強会を開催する他、新年会やハロウィンパーティーなんかの、スタッフ同士のイベントに使うこともあります。私が子供が好きなのと、スタッフさんもお子さんが多い年代なので、みんな仲良くしたらいいかな、と思って提案したら盛り上がった、という(笑)。
たまに気遣って参加してくれてるのかな、と思わなくもないのですが、新年会には容赦なく参加者が少なかったので、都合さえ合えば楽しんで参加してくれてるのかな、と思っています(笑)。
元々勤務医だった頃から看護師さんと仲良くするのが好きだったので、スタッフの皆とも同じように仲良くできているのかな、と思います。今度はキャンプに行く予定をしています(笑)。

チームワークを育む
クリニック

一見楽しんでいるだけの様に見えることでも、こうして育まれたチームワークは、日々の診療にも大いに役立っています。例えば患者さんの食生活改善について栄養士さんが加わることで「スイカだったら種を含めて330グラムだけ、カットスイカで中身だけだったら200グラムは食べても良い」というように、これ食べたいなら何グラム、ということがパッっと言えます。こうしたところに専門性って出るのかな、って思うのです。

計量器ありますか? ってお尋ねしてグラム数に応じたサンプルをお見せしながら、これが学会で推奨されていることですよ、と視覚的に見せながら話す。こうした具体的なアドバイスをして、そこから「じゃあ別途細かい指導になるけど、看護師さんが付くから一緒にやってみましょう」ということで栄養士さんに引き継いでいく。栄養士さんの指導を実際に受けてもらって、合ってないのはこうしているからですね、と答え合わせをやる。

この一連の流れと細かい指導が、生活習慣や食を変えていただくためには非常に重要で、これは栄養士さんがいるからこそできていることです。

チームワークが取れていると、こうした決められた流れ以外でも強みを発揮できます。以前に月に一回、糖尿病で来院されている患者さんが、発熱外来でうちに来ていただいた時の話です。発熱の 検査の結果、陰性だったので部屋を写ってもらう、という瞬間がありました。その瞬間、看護師さんが患者さんとすれ違いざまに「なに?風邪ひいたの?」「そうなのよー」なんて声をかけてくれて、それで始まった雑談から、診療では言ってくれないことが分かる、なんてことがありました。

それでわかったことを、「先日どこどこに行ってたらしい」と報告してくれたり、その話から時間や場所が出て、その間何々の薬はいけないと思って飲んでいなかった、という情報をカルテに書いておいてくれるんです。すると、次回の診察の時に、話を聞く時最初からそのことを前提にしたスムーズなお話をすることができるし、指導も、より具体的なことができるようになります。

週末診療の
メリット、デメリット

当院では土日も診療を行っています。開業当初から、私は「うちは土日も診療するぞ!」と意気揚々と目標を掲げていました。表向きには、一応、銀行への営業文句として、他にやっているところがないし、土日に空けることで、働き盛りの人が来られるから、ということを謳うためです。

すると実際に、土曜日に働いている男性患者さんが来るようになりました。面白いのは、日曜日にこられる人って、基本日曜日にしか来ないんです。保険の問題もありますが、彼らはやはり日曜しか時間が取れないようですね。元々「土日も診療するぞ!」となったきっかけは、「土曜だからこられた」という患者さんたちです。

勤務医時代、色々あって土曜の診療を閉じることになったことを伝えた時、人工透析にならないように踏ん張らなければいけない方が「これから僕どうしよう」と仰っていたことや、担当していた方々の中に通えなくなった方が結構いらっしゃったのです。じゃあ土日もやったらそういう人たち来られるのかなと思い開いてみると、やっぱりそういう患者さんたちが結構いらっしゃる。ただ、土日診療を行うことでいろんな課題も出てきました。まず、スタッフの採用が難しくなります。土日勤務を掲げていると、応募が減ってしまうんです。次に、土日に検査機器が壊れたときには対応ができません。平日なら検査会社がすぐに回収に来て対応してくれるんですけど、土日だとそうはいきません。土曜日午前までに壊れてくれればな、と思うんですが、日曜の朝に壊れると、もうお手上げです。当院の検査では通常なら何日もかかる検査結果が2時間以内に出るので、患者さんにはとても喜ばれていると思います。だからこそ、機器が壊れたときは本当にヒヤヒヤしますね。

ホッとする
山小屋のような雰囲気

クリニック全体の雰囲気づくりにもこだわりました。私はキャンプが趣味なので、院内にはランタンや薪など、山小屋をイメージしたインテリアを取り入れています。また、季節ごとのディスプレイにも力を入れており、昨年のクリスマスにはツリーを飾りました。子どもの頃、クリスマスツリーを買ってもらえなかったので、自分のクリニックでは思いっきり飾ろうと思って(笑)。お正月には鏡餅も飾りますし、季節感を大切にしたインテリアを飾るのは楽しいです。

特に外観にあたる、入り口の全面サッシを利用したディスプレイのスペースは、イギリスで見た景観保全地域の二重窓にヒントを得て工夫しました。窓の内側にさらにサッシを設けて、その隙間をディスプレイのようにして小物を飾ってあります。そのスペースの下にはディスプレイ用の薪も置いてます。

ディスプレイには思わぬ反響があって、秋に大きな松ぼっくりを飾っていた時などは、患者さんが「道の駅で拾ってきた」なんて言って持ってきてくれたりして、ってどんどん増えていったりしたことがありました。すると、ある日、外で子供が泣いている声がして、後で聞いたら、隣に小児科があるんですが、その帰りのお子さんが見てくれて「松ぼっくりが欲しかったそうです」なんてこともありました。

こうした工夫によって、院内のプライバシーも守りながら、患者さんにとって居心地の良い空間を提供できるよう心がけています。

コンセプトは
「学べるクリニック」

当院のコンセプトは「学べるクリニック」です。患者さんやスタッフに常に新しい知識を提供し、共に成長していく場でありたいと考えています。患者さんの啓発も重要ですが、なんといっても医師含め、スタッフも一生かかって、知らなきゃいけないことが多い。
特に糖尿病や腎臓病に関しては、ガイドラインが定期的に変わりますから、学会でのアップデートや勉強も欠かせません。使っていた薬がいつの間にか第一選択薬に上がっていることもあって、最新の知識をしっかり学んでおかないと患者さんに適切な説明ができないんですよね。

開業当初は採用が難しかったこともあって、スタッフは1人の人だけができるんじゃなくて、みんなで出来るようになっていきましょう、という方針を立てていました。そこから、看護師さんやスタッフ総出で、簡単な方の資格から全員取ってくれて、今ではだんだん、みんな同じように仕事ができるようになってきています。食べ物は季節ごとに食べ物の注意するポイントが違う。当然、スタッフの考えることや、単純に用意する薬も種類が多くなります。
ですが、勉強してわかると、患者さんの変化もわかるし、質問されても答えられるようになるので、やっている側としても楽しくなってくるんですね。患者さんに対しては、糖尿病の透析予防に力を入れていて、そのための教室を年に3回開催しています。昔から割とこうしたことは好きで担当していたので、それをそのままやりたいね、というのも構想の中に入っていました。

開業して今、思うこと

開業してから3年が経ちましたが、思っていた以上に忙しくなりました。特に開業当初は患者さんも少なくて、ハロウィンの時にはかぼちゃを掘ったりして時間を持て余していたんですけど、今ではそんな余裕もありません(笑)。
開業前に不安はなくて、周りがみんな「絶対うまくいく」「大丈夫」と言ってくれていたし、銀行さんも貸してくれる、ということは大丈夫なんだろう、開業した後患者さんが少なかった時もやっぱりみんなが「絶対大丈夫!忙しくなる!」と言ってくれていたので大丈夫なのかな、と思っていました(笑)。

ちなみに入り口のところの、キャンプをしている人形のテントは開業前に寝ないで作った私の手作りです。指先を動かすのが好きなのです(笑)。

開業後はなんといっても、診療以外の仕事が増えました。診療の合間に書類を書いたり、スタッフの採用や面接もやらなければならないですし、給与明細の入力もしているんです。看板をどこに出すかとか、医師会の仕事をしたり、初めてで分からないことも多いので診療だけしていれば良かった時代とは大違いです。どうしても分からないこと、初めてのことは、同年代の医師の友達伝いに、良い先生を紹介していただいて、分からないことを聞いたりしています。今も週に1回、実家の医院にも行っているのですが、父が田舎で医師会長をしていたこともあって、経営の面では父からも割とわかりやすくアドバイスをもらっています(笑)。

実家、東北の町医者のように

開業前と後では、私自身の心境も変わりました。以前は、ちょっとしたことで悩んでいましたけど、今では少し図太くなった気がします。患者さんの対応にしても、『ああ、そうですか』と余裕を持って対応できるようになったんです。よく婦長さんと話すんですが、糖尿病の患者さんって、みんな同じことを言うんですね。
「食べないよ、食べるって言ったって、おせんべい、このくらいなの」って、だんだん喋っていくと、最初これくらい、と片手で手で小さく表していたのが大きくなっていき、1枚が2枚になって…というくだりが、みんな同じなんです(笑)。

地方ごとに患者さんにカラーもあって、地元だと時々、患者さんから何かテレビや本を見たと思しき、不思議で熱心な質問をいただいたりします。「低脂肪と低脂肪牛乳、どっちがいい?」なんて聞かれて、え?と思って、何聞かれたのかな? と思って聞き返して、低脂肪? 低脂肪牛乳と何? 何が飲みたい?牛乳? って聞くと「うん」と言うので、じゃあ低脂肪牛乳がいいんじゃない? なんて話をしたりする。

他にも「胸が痛いから来ました」というので、「あ、痛いんだ。朝から?」と聞くと、「違う、2週間前」というので、「 2週間ずっと痛いんだ?」「ううん、そん時だけ」なんて、おっしゃる。
わかるんだけど、「あ、え、あ、あれ!?」みたいなやり取りがある。
そういうちょっとしたやり取りが楽しくて、ついつい笑ってしまうこともあります。

いくら栄養士さんが話を聞いてあげても行動が変わらないばかりか、方針を決めてもう10回目だけど、毎度同じところから話をしたりする、なんて方もいます。それなのに本人がやりたいって言って続けてきてくれていて、まるで話すのが目的になっているみたいなんですが、それでも来てくれるというのがいいと感じています。

というのも、私の実家のクリニックは昔から町医者のような存在で、父が往診をしたりして、地域の人たちと深く関わる様子を見ていたためです。私もそうした環境で育ってきたからか、患者さんと長くお付き合いするスタイルが自然と身についているようなんです。
ですから、患者さんとの会話はこの仕事をする上での楽しみの一つです。

リラックスして、
健康を考える場所に

特に糖尿病の患者さんは、長くお付き合いすることが多いので、自然とお互いに打ち解けてきます。時には冗談を言い合ったり、食事の話をしたりして、ただ病気の話だけじゃなく、日常生活についても話すことができるのがいいですね。昔から「口から生まれてきた」なんて言われて、お喋りでよく怒られたものですが、まさか大人になってから役立つとは、分からないものです(笑)。

患者さんから「ここに来ると病院に来た感じがしない」って言われることがあるんですが、私はそれが理想の形だと思っているんです。病院は治療の場であると同時に、患者さんがリラックスして自分の健康を考える場所であってほしいと思っています。

最近では、糖尿病の治療に対する考え方も少し変わってきました。『一生続く病気なんだから、たまには薬に頼ってもいいじゃない?』って患者さんに言うことが増えました。完璧な管理が難しい患者さんに対しても、無理のない範囲で治療を続けてもらうことが大事だと思っています。
実際、そうやって続けやすい治療を提供することが、長期的には最も効果的な治療になるんです。

まだまだ、
アップデートしたい

開業は、してみてよかったです。思った通りのことができる。ただ、ないものねだりですが、忙しくなければ、もっと思ったことができるのに、とも思います。

例えば、ホームページの更新や栄養指導のページをもっと充実させたいと思っていますが、忙しさに追われてなかなか手が回らないのが現状です。ホームページに使っているキャラクターは、実は勤務医時代に暇を見つけては少しずつ描きためたものです(笑)。作りたいアイコンやデザインは頭の中に浮かんでいるのですが、忙しさの中でそれを形にする時間が取れないのが残念です。

季節ごとのディスプレイもそうです。おひな祭りのときに飾っていた実家から持ってきたお人形も、今年は忙しくて出せませんでした。スタッフからも「今年はやらないんですか?」なんて言われちゃって、少し申し訳ない気持ちになりました。

ですが、そのぶん、これからも患者さんにとって信頼できる場所であり続けるために、勉強もアップデートも欠かさず、スタッフと一緒に成長していきたいと思っています。

忙しい毎日ですが、その中で見つける小さな喜びや、患者さんの笑顔があるからこそ、続けていけるんだと思います。もっと時間があればやりたいこともたくさんありますが、今はこの忙しさを楽しみながら、一歩一歩前に進んでいきたいと思います。

開業サポートなど、
お問い合わせ

クリニック名
糖尿病内分泌 から桃内科
住所
千葉県流山市おおたかの森南3-8
診療科目
内科・糖尿病内分泌内科
ホームページ
https://apricot.clinic/

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